先日内科の先生が来院された際に
「牽引ってどうなんですか?」
と質問されました。
この内科の先生とは、よく整体や症状、身体の仕組みについてよくお話をするのですが、今回はその牽引についてお尋ねがありましたので、私なりの考えをお伝えさせていただきました。
牽引は欧米では現在は行われていないらしく、効果もさほど見受けられないという結果が出ているそうです。
※望クリニック整形外科院長 住田憲是 監修の書籍では、『EBM(Evidence Based Medicine=科学的根拠に基づく医療)によって、牽引をしても狭まった腰椎の椎間板が広がる効果がほとんどないことがわかったため、現在、EBMに厳しい欧米では(牽引は)行われていません。』とされています。
もともと椎間板ヘルニアなどの患者さまに行われていた牽引ですが、椎間板の間隔が広がる効果がほとんどないため結果として牽引を行う必要があまりないのではないかということ。
椎間板の間隔が狭まってしまうのは、骨と骨とをつなげて固定している筋肉が、異常な緊張を持ち、骨と骨の関節を動かしづらくするほどに固くなってしまったことにあります。
つまり、関節を広げる=動きやすくする ためには、筋肉の緊張を緩めることが大切で、筋肉の緊張をないがしろにして無理やり引っ張ってしまっても効果は伴わなくて当たり前だということなのだと思います。
とはいえ、牽引をすると「気持ちがいい」「良くなった」と感じる人もいて、一概に牽引が「効果が薄い」と言い切れるものではないことも認識しています。
石川健康院に訪れる患者さまの多くが、牽引でも良くならなかった患者さまばかりなので、患者さまから教えていただく限りの牽引の効果としては「悪化」がダントツです。
「悪化」といいますと、どんなふうに悪化したのかが気になるところです。
当院の患者さまの意見はこうです。
1、牽引後、牽引台から起き上がれなくなってしまうくらい腰が痛くなった。
2、首の牽引で気持ちが悪くなり、めまいがした。
3、毎週のように牽引に行ってみましたが、徐々に痛みが増してきました。
お話を戻してみましょう。
骨と骨をつなぐ筋肉が過緊張を起こしているわけですから、これを緩めなければなりません。
牽引は、この緊張した筋肉を無理やり引っ張って緩ませようとするわけですが、ここで大きな矛盾が生まれます。
人の体は腱紡錘、筋紡錘という二つのセンサーによって筋肉の緊張・弛緩のコントロールを行います。
あるときは筋肉が引っ張りの強さで引きちぎれないように強く収縮させたり
あるときは腱が引きちぎれないように筋の緊張を緩めたりします。
むつかしい言葉を使えば求心性のIa線維によって脊髄に伝達され、筋が緩む・・・云々
となるわけですが、ここは割愛。
わかりやすく説明しますと、ストレッチなどで、急激に勢いを付けて筋肉を伸ばそうとすると、筋紡錘センサーが働いて筋肉がちぎれないように緊張させます。結果、勢いをつけてストレッチを行うと、体は逆に固くなります。
逆にゆっくり時間をかけて徐々に伸ばしていきますと、今度は腱が引きちぎれないように筋肉を緩めるように腱紡錘が働きかけます。
これらを伸張反射と呼ぶそうですが、スポーツ選手や運動オタクな方なら意外と知ってる雑学です。
そして、このことからもわかるように、ちょうど良い牽引のときには筋肉はゆっくり緩み関節が広がり効果が上がりますが
その患者さまの身体に合わない強さで牽引を行った場合、筋紡錘が働き筋肉は逆に緊張を強め、症状などを悪化させるのだと言えます。
わたしたち整体師は、そういった面からも「手」のみの手技であるべきですし、患者さま一人一人にあった強さ、方向、時間で調整を行わなければならないのだと言えます。
道具や機械を使ってしまっている整体屋さんには少し酷ですが、あまり良い方法とはいえそうにありません。。。
結論。
患者さまのお身体にあった強さで牽引できない機械は、悪化のリスクがあるためオススメはできません。
以上、石川健康院 院長石川でした~。